ミクロラスボラ・ハナビはその華やかな柄から人気の熱帯魚ですが、インターネットで情報収集をしていると “弱い” だったり “飼育が難しい” という意見も見受けられます。
私自身、お迎えした当初は痩せた状態が改善しない個体がいたりと餌で色々と苦労しました。この記事ではそんな経験から得た知見を同じ悩みを持つ方に共有できればと思います。
どれぐらいの体型だと痩せているのか?
ミクロラスボラ・ハナビはコイ科の魚で背中に丸みを帯びた体型をしています。それが痩せてくるとお腹側だけがどんどんへこんで来ます。人によっては “への字に曲がる” と感じる方いらっしゃるほど変形してしまう子もいるようです。
オスメス混じっての解説だとややこしいと思いますので、今回は写真をオスで揃えてあります。
標準的な体型のミクロラスボラ・ハナビ
我が家のミクロラスボラ・ハナビのオスは大半がこのような体型です。図鑑で見る写真やアクアリウムショップで販売されている個体と見比べても大差がないので、これぐらいが標準体型だと思われます。
丸っこいフォルムにつぶらな瞳でとてもかわいい魚です。夜空に打ち上げられた花火のような柄に目が行きがちですが、華やかさだけでなく小型魚ならではの可憐さも兼ね備えているかわいいやつです。
少し痩せ気味なミクロラスボラ・ハナビ
この子はお迎えした当初から痩せ気味な個体です。
毎日観察している限りでは特別に食が細い個体というわけではなく、単に餌を食べるのが下手なようでした。どうにも不器用な感じで餌を見つけるのも、見つけた餌に食いつくのも他の個体に比べると成功率が低く、結果として食べられている餌が少なくなってしまっているようです。
への字に曲がるほど変形してしまったミクロラスボラ・ハナビ
先程紹介した痩せ気味な個体が更に痩せてしまうとお腹のへこみが更にひどくなってへの字になってしまいます…。
後述しますがこれは個体の能力の問題でもあり、他の個体とのパワーバランスの問題でもあると考えています。
痩せてしまう理由
餌に貪欲で何でもいつでも食べるかというとそうではないので種類として痩せやすい方だと思います。また、他の熱帯魚やメダカなどと同様に個体差があります、弱い個体は生存競争に負けてしまうというケースも考えられます。
人工飼料を普通に食べてくれる時点で、飼育が難しい魚種に慣れてらっしゃる方からすると特別に難しい部類ではないと感じるかもしれませんが、メダカや金魚しか飼ったことがなかったり初心者向けと言われるような熱帯魚しか飼育経験がない方には難しいのかなと個人的には感じます。
以下、それぞれ詳しく解説します。
① 餌への執着が薄い
そもそもミクロラスボラ・ハナビという種類自体がそもそも餌に関して少し気を使ってあげないといけない魚なんじゃないかと感じています。他の熱帯魚やメダカを飼育した経験と比較しても少し餌に対して過剰に頓着しないように感じます。
メダカや金魚なんかは餌を上げるとたくさん食べてくれますし、口も比較的大きいので与える餌の種類や与え方で苦労した経験はありません。そういった魚種が餌に関して簡単な部類だとすると、ミクロラスボラ・ハナビは簡単な方ではないと思います。
餌を食べるのが特に苦手な個体だけでなく、得意な個体以外は全体的に痩せやすい印象があります。
そもそも口が小さくかなり小さな餌でたないと食い気の弱い個体は食べてくれないことがあります、また一度口に含んだ餌を吐き出してしまったりと餌が合っていないと何かと苦労が多いです。
Youtubeを見ていると『 アクアリウムトールマン 』というショップの動画内でパッケージにミクロラスボラ・ハナビが描かれた餌が紹介されていました。これによるとこの餌は “ウェッティな感じでソフト” な餌でミクロラスボラ・ハナビのような餌への執着が薄い魚でも食べてくれやすい異物感の少ない餌だと解説されていました。
確かに口に入れたということは餌だと認識はしているのにも関わらず吐き出すということは、違和感( 異物感 )があるからというのは筋が通っているように思います。
② 個体ごとの能力差
管理された水槽で飼育しているとはいえ、水槽の中で生存競争が起こります。当然弱い個体は餌にありつける確率が低くなりますので、強い個体と比べて体格差はひらいていく傾向があるように感じます。
こればっかりは仕方のない部分もありますのであまり神経質にならず、快適に暮らせる環境づくりを精一杯してあげることを頑張るしかないのかなと思います。
③ オス同士の縄張り争い
ミクロラスボラ・ハナビは縄張り意識のある魚でオス同士ではフィンスプレッディングという威嚇行動を行いことがあります。餌やりの最中にも体格の良い個体が痩せた個体を追い払うように追いかけ回していることもあります。
お迎えした直後は体格差が少なく個体ごとの優劣がはっきりしていませんでしたが、次第に差が広がり以下のような悪循環が生まれてきました。
① 餌を食べるのが上手な個体とそうでない個体がいる
↓
もともとの能力差で餌にありつける確率に差がある
② 成長に伴い体格の良い個体がそうでない個体を追いかけ回すようになる
↓
体格差がでてくることで更に餌にありつける確率の差が広がる
③ 追いかけ回される状況が続く
↓
ストレスで拒食になる
拒食になってしまうと餌を食べないわけですので回復が難しくなります。もともとの能力差はどうしようもありませんので、基本的にはこの縄張り争いを極力起こさない、起こしても小競り合い程度で済むようにして弱い個体にストレスがかかり過ぎないように試行錯誤しています。
④ オスがメスを追いかけ回す
これはミクロラスボラ・ハナビに限った話ではありませんし、求愛だったりもするのだと思うので悪いことではないのでしょうが複数のオスに対してメスが1匹といったように匹数に差があると一部のメスにストレスが集中して拒食になってしまう場合があります。
我が家でもオス同士の縄張り争いで痩せた個体をなんとか復活させたと思ったら、そのオスがメスを追いかけるようになり、今度はメスが痩せてしまいました…。
個での最適化ではなく群れとしての最適を考えた方がいいのかなと思うきっかけでした。
試したものの失敗だったこと
① 飼育環境の差を考えず購入したショップで与えている餌をそのまま使った
当時あげていたのはこのADA社製の「 AP-2 PREMIUM 」という小~中型魚用の餌で浮遊性の餌です。ミクロラスボラ・ハナビを購入したアクアリウムショップで与えている餌ということで購入しました。
ただ、家に帰ってきて与えてみると上手く食べてくれません。これはシンプルに体長2~3cm程度の超小型魚な上に口が小さいからでした。
水面に餌を浮かべると見つけて食べ始めますが一口では食べることができずに餌をつついて砕けさせた後に小さくなった欠片を食べるという状況でした。ただ、欠片をすべて残らず食べることはなく必ず食べ残しが発生してしまうのが悩みの種でした。
水槽には同居人としてチェリーシュリンプがいるので食べ残しはその子達が食べてくれるのですが、その結果としてチェリーシュリンプが水草の苔を食べなくなるという悪循環が生まれてとても困っていました。
ショップで与えていた餌なのにどうして?と思われるかもしれませんが、それはショップと我が家の飼育環境の違いに原因がありました。ショップでは同じ水槽で多くのミクロラスボラ・ハナビや別の種類の小型魚が入り混じった状態で飼育されていました。
そのような状況では以下のようなことが起こり餌が上手く多くの魚に行き渡るようになっていました。
[ 1 ] 水面に浮かんだこの餌に別の魚種が先に食いつく
↓
[ 2 ] 砕けて沈下しはじめた欠片をミクロラスボラ・ハナビが食べる
↓
[ 3 ] ミクロラスボラ・ハナビが食べそこねた欠片をまた別の魚種が食べる
餌を食べるの上手な別の魚がいることでこの餌が最適解となっていたわkです。
対して、我が家の魚は少数のミクロラスボラ・ハナビのみ、同居人はチェリーシュリンプのみで他の魚はいません。この飼育環境の違いがショップで与えていた餌を買うというセオリー通りの対応で上手く行かなかった原因でした。
② 砕けて沈下するタイプの餌で大量の食べ残しが発生
① でご紹介した餌は浮遊したのちに沈下するタイプで、餌を口でつつくと砕けてゆっくりと沈みはじめます。沈んでいる最中もミクロラスボラ・ハナビは一応餌を食べようとはしているのですが、上手く食べられなかった餌を底床付近まで追いかけて食べるということはありませんでした。
結果として底床には食べ残した餌が…。エビはここぞとばかりに集まってきて食べていましたが水質は悪化するばかり…。
③ 沈下速度の早い餌はほとんど食べそこねてスルー
色々な餌を試すなかで同じ浮遊性の餌でも沈下する際の速度が違うことに気づきました。
そしてミクロラスボラ・ハナビは餌を食べるのが上手ではありません!ものすごく食べ損ねます…。そもそもゆっくりと沈下する餌だったとしても沈下中にうまく食べられる確率は低いです。
底床に落ちた餌を追いかけて食べてくれることも稀なので我が家では浮遊性の餌を水面で上手に食べ切れるという状態を目指して試行錯誤することにしています。
④ 拡散防止リングを使って毎回同じ場所で餌を与えることで争いを助長する結果に
ろ過フィルターを止めるとその分だけ水質が悪化するような気がしてフィルターを止めずに水面が波打っている状態で餌を与えたいと思ったのがきっかけで拡散防止リングを導入してみたことがありました。
ミクロラスボラ・ハナビは餌を食べるのが遅いのでゆっくり食べられていいかなと気軽に考えていたのですが、結果としては同じ場所かつ限られたスペースに集まった餌を取り合うことになるので縄張り争いのような小競り合いが生まれてしまいました。
しばらく拡散防止リングでの餌やりを続けていたせいか、餌やり以外の時にも強い個体が弱い個体を追い回すことが度々あり、明らかに弱い個体が逃げている様子でした。この時期はオス同士でフィンスプレッディングをすることもなく一方的に追いかけ回されている感じでコンディションとしてはとても悪いかったように思います。
⑤ 強い個体を隔離した結果かなり弱ってしまった
弱い個体を隔離すると環境の変化と隠れる場所がない状況から更にストレスを与えてしまうリスクがあります。ストレスが増すと拒食が改善するどころか悪化してしまう可能性もあります。
そこで逆に強い個体を隔離することで他の個体にのびのび過ごしてもらおうと考えました。
ただ、結果としては上手くいかず、いくら強い個体とはいえミクロラスボラ・ハナビは臆病で群れで行動し水草などに潜み隠れているような種類なので隔離ケースの中は相当にストレスフルな環境だったようで退色薄くなり常に落ち着かないようすで泳ぎ回っていました。
弱い個体が日に日に痩せていく状況だったので数日そのまま隔離していましたが、4日後には強い個体も平衡感覚を失ってくるほど弱ってしまったので隔離をやめました。
後日、また強い個体が他の個体を追いかけ回して痩せさせていたので今度は飼育ケースではなく水槽を仕切りでセパレートして隔離してみました。
飼育ケースと比べると遥かに広いスペースで隠れる場所もあるのでそこまでストレスは掛かっていないんじゃないかなと思っていたのですが、ある日尾ぐされ病になっているのに気づきました。
隔離スペースの広さや過ごしやすさばかり気にしていましたが、普段群れで過ごす魚を1匹にすること自体がストレスだったのかもしれません。
この件をきっかけに隔離で解決する方向は諦めました。
試して正解だったこと
① すごく小さな粒の餌に変える
単純な方法で恐縮ですが、すんなり食べてくれる餌を見つけるべく色々な商品を試しました。メダカの稚魚用のパウダー状の餌を与えてみたり、フレーク状の餌を試してみたり…。
すべての餌を試した訳ではないので最適解かはわかりませんが、我が家のハナビはこれならすんなり食べてくれるという餌がこちらのADA社製「 AP-1 PREMIUM 」でした!
最初に購入した餌の隣に陳列してあったのに…、最初からこれを買っておけばよかった…。
この餌はパウダーほど細かくはなく水中に舞い散ることもないので水を無駄に汚すこともありません。ですがサイズ感としてはかなり小さく口の小さなミクロラスボラ・ハナビでも一口で上手に食べることができます。課題だった吐き出しもなく、上手にすべて水面で食べきることができるようになりました!
飼育環境や個体差によるところはあるかと思いますが、我が家のハナビは毎日食べてくれているという実績からADA社製「 AP-1 PREMIUM 」、この餌はおすすめです。
においや色からしてこの餌の嗜好性が特別に高いというわけではなさそうですので、極小サイズの浮遊性の餌を与えれば食べてくれる可能性はありそうです。
② 水面に十分な量の餌を広げて与える
餌やり時の争いを減らすために広範囲に餌がある状況をつくりました。
水質のことを考えるとあまり良くはないのでしょうが、痩せて落ちてしまう個体をなくすことを重視して少し多いかなと思う量の餌を水面に漫勉なく広範囲に浮かべて与えています。
これにより一箇所に集まって餌を食べる中で強い個体が弱い個体を追い払うようなことはなくなりました。
↓ お腹がペタッとしていたのが、1週間ほど経つといい感じの標準体型に戻りました。すいません、写真の画質が悪くてわかりにくいかもしれませんが肉眼で見ると明らかに健康的な体型になっています。
Before
Aftere
↓ 更に1週間ほど経つとだいぶふっくらしてきました。
③ 食べるのが上手な個体を先にお腹いっぱいにする
ミクロラスボラ・ハナビはこうだあーだと一括りに語るには個体差が激しいなと感じています。
実際に体格が良く能力の高い個体は食い気もあり結構大きな餌でも果敢に何度もアタックして上手に食べてくれます。対して弱い個体は小さな粒の餌でも食べそこねることもあったりします。
そういった個体差を利用して強い個体向けの大きくて早く満腹になる餌と、他の個体向けの餌を2種類与えてみることにしました。
強い個体向けに与えているのはキョーリンからでている「 クレストフリーク バイオバイツ 」です。
この餌は赤い色と細長い形状から赤虫を連想させるのか魚の食い気がいいと評判の商品ですが、我が家のミクロラスボラ・ハナビも例に漏れず食いつきがいいです。ただ、食いついたところで対象が2cm程度しかない超小型魚なので我が家では強く大きな個体しか食べられません。
ただ、②の方が楽で弱い個体の体格も良くなるといういい結果もでているので無理してこちらを実践する必要はないかもしれません。
④ 水槽を覗き込まず少し離れるまたは部屋をでる
ミクロラスボラ・ハナビは臆病な性格のようで水槽に顔や手を近づけるとさーっと逃げていきます。これは小型魚全般に言えることかもしれないですね。
少しでもストレスを与えずリラックスして食べてもらえるように餌を与えたら水槽から少し離れて観察するようにしています。
最近はどこまで視覚や気配で私の存在を感じているかわからないので一番良いのは部屋に居ないことだろうと思い、しばらく部屋からでるようにしています。
これはどこまで意味があるかはわからないのですが、肌感覚的にプラスに働いているように感じているので一応正解だった方に入れておきます。
拒食になった場合の対処法
これに関しては私もまだいい方法を見つけられていません。
への字になった個体をサテライトに移し単独飼育状態にして餌を与えてみましたが食べてくれませんでした。当時、強い個体に追いかけ回されていたのでそれならサテライトの方がまだマシじゃないかと思い隔離しましたが状況は好転しませんでした。
今は第一にここまで状況が悪くならないように色々と工夫することにしています。
まとめ
ミクロラスボラ・ハナビは
① 口が小さいのでかなり小さな餌でないと上手に食べられない
- 小型魚用と書いてあっても粒が大きすぎる場合がある
- 特に小~中型魚用といった幅広く対応と書いてある餌は注意
② 餌への執着が薄い
- 違和感のない餌でないと吐き出す
- 食べそこねた餌を追いかけて食べるのが控えめなので水面で食べ切れる程度の少量ずつ与える
③ 体格差が広がると縄張り争いが生まれる
- 痩せる→威嚇される→ストレスで拒食という悪循環に気をつける
- 特に餌を食べるのが苦手な個体がいることを念頭に置いて餌やりをする
④ オスがメスを追いかけ回すことがある
- 可能ならオスとメスの匹数に大きな差がでないようにする
- オスメスを指定して購入することは基本的にできないと思うのでなかなか難しいですよね…。